スポーツ栄養研究会・運動生理学トピックス -スポーツ栄養学のすすめ(入門編)-
スポーツ栄養学とは?
スポーツ活動は、世代を問わず何にも変えがたい楽しいものです (^^)
けど運動したらお腹がすきますよね?
それは疲れた身体が、食事(エネルギー)を求めているからです。
もし貴方が次の日、疲れた身体のまま練習に出ても、きっと良い練習はできないでしょう・・・
毎日の疲れを残さない食事とはどんな食事なのでしょうか?
練習が終わってからのミーティング・・・ 練習後はいつ食事をするのが良いのでしょうか?
スポーツ選手の輝かしいプレーは、間違いなく日々の一生懸命なトレーニングの賜物です。
そんなスポーツ選手を、私たちは食事の面からバックアップできないだろうか?
もっと筋肉をつけたい・・・ 減量の悩み・・・ 貧血の悩み・・・ 悩みが無いスポーツ選手はいません。
日々の練習の中で良いプレーができれば、きっと試合でも同じプレーができますよね!
スポーツ選手が大会で100%の力を出せるようにサポートしたい!
運動とは身体の構造と機能が一つとなっておきる現象である
(本学ソフトボール部と姉妹校との練習試合にて)
栄養士さんが直接運動指導をするわけではありません。
けれどもスポーツ選手と一緒になって、
どうしたら一番良い方向に向かえるのかを、二人三脚で一緒に考えていく (^o^)/
スポーツ栄養学とは、そんな献身的な学問でもあるのです。
何を食べたら良いのでしょうか?
スポーツ選手といっても、 小学生か中学生か高校生か?成年なのか壮年なのか?
男性か女性か? 身体の悩みがあるのか? 球技系か持久系か瞬発系か? 今は鍛錬期か試合前か? それこそ様々です。
しかし基本となる食事は、糖質が多めの食事です。
糖質とは、すなわち炭水化物! ごはんとかパンとか麺類の事です。
どうしてスポーツ選手にとって糖質が一番大切なのでしょうか?
筋肉が動くのにはATPと呼ばれる物質が必要です。
ATPが無くなってしまうと筋肉は動く事ができなくなりますので、これを防ぐ為に筋肉自身はグリコーゲンというATPの素をたくさん貯金しています(文献1)。
そのおかげで私たちは、普段の生活程度では気にすることなく、毎日身体を動かす事ができます。
しかし、日々何時間も練習するスポーツ選手は(もちろん普通の運動系部活動の人でも同じです)、頑張って運動するので、筋肉中のグリコーゲンがスッカラカンになってしまいます。
グリコーゲンは糖質で出来ているので、基本的に体脂肪からは合成できません。
つまり、食事から得た糖質を利用して、もう一度、筋肉中にグリコーゲンを貯金するしかないのです。
すなわち、スポーツ選手は、まずは糖質(ごはんなど)を普通の人より少し多めに摂るのが食事の基本にして奥義です。もう少し言えば、これが翌日に疲れを残さない秘訣でもあります (`・ω・´)
理想の身体作りはトレーニングだけでは不十分です。しっかり食べて、丈夫な身体を作りたいものですね。
本学での主な研究の紹介
本学では、スポーツ栄養学に関する研究も行っています。
いくつかの講義でもスポーツ栄養学に触れる機会があります。
また、特に興味がある学生は卒業研究のときに、卒論生としてスポーツ栄養学に深く関わる事ができます (^o^)/
(1)高校運動部生へのスポーツ栄養講座(調理実習)
地域のスポーツ栄養士の未来の卵たちが、運動を頑張っている地域の高校生に何かできないか? ということで運動部の高校生やマネージャー、保護者の方々を短大調理室へ招いてスポーツ栄養講座(調理実習)を行っています(文献2)。地域の部活が更に強くなって、地域に笑顔が更に増えるといいなぁと、そんな想いがあります (^^)
(2)スポーツ選手への、栄養と心理学に関する研究
栄養士さんはつい数字に目がいってしまうのですが、栄養指導を受ける人の心理も、行う側の心理も大切なような気がします。心理学の先生に弟子入りしながら、栄養と心理学という新しい分野の卒業研究をしています (^^)
また卒論生がこの調査を題材にして書いていた卒業研究が、日本運動スポーツ科学学会の機関誌「運動とスポーツの科学」に掲載されました(文献4)。21歳で学会誌の筆頭著者というのは実は大学・大学院を見ても非常に珍しい快挙です。
(3)アスリート弁当の開発研究
運動選手の公式戦のお昼ご飯(お弁当)はどのようなものが良いのでしょうか? 年齢・性別・競技スポーツによっても違いますが、基本的な考え方は一緒なはずです。彩り、食べやすさ、腹持ちのよさ・・・ 市内のお弁当屋(ハローランチ飯田店)さんに協力をお願いし選手に食べて喜んでもらえるようなお弁当を学生と一緒に開発、実際のアスリート弁当(写真右)は平成22年度 第16回長野県私立短期大学体育大会にて販売されました (^^)
またこの取り組みをテーマテーマとした卒業研究ですが、こちらも学会誌に掲載されました(文献4)。
(4)スポーツドリンクに関する研究
現在、コンビニなどでも色々なスポーツドリンクが販売されていますが、いつ、どこで、何を、どのように飲めば一番いいのか?というのは、ある程度はわかっていますが、細かいところはよく分かっていません。また、腸管に対するイオンの吸収・分泌や酸・塩基の関係なども、スポーツドリンクには重要な要素ですが、まだまだ世界的には研究段階にあります(文献5)。一方で、熱中症の治療には、真水ではなくスポーツドリンクや生理食塩水を使用するのが良いという事はよく知られています。
往復20m走に対するスポーツドリンクの飲用効果をみています(測定風景)
(5)トップスポーツ選手における食事の大切さの研究
※長野県飯田市にある自転車ロード実業団チーム、ダイハツ・ボンシャンス飯田の栄養サポートなど(文献6、7)
スポーツ栄養学にとって花形ともいえますが、食事のサポートはスポーツ選手において非常に大切な事です。
特に、糖質(炭水化物)やたんぱく質は、体の素になるものです。スポーツ選手は人一倍、食べる量に気をつけなくてはなりません。
また、選手のみならず、常日頃体を動かしている人たちにとっても、食事は何よりも大切な事です。
炭水化物(糖質)は量よりも質?質よりも量?バランスの良い糖質をたくさん食べてもらってスポーツ選手や働いている人達の疲れを癒すことが出来ないものでしょうか?実際に良い結果を残すための食事とはどのようなものなのでしょうか?
現在、このようなテーマに対しての答えを見つけるため、スポーツ選手に食事調査などを行い、学生と共に勉強を行っています。時には学生の書いた卒業研究がスポーツ栄養の公式論文になったりしますよ (^o^)/ (文献3、4、6、7)。
本学には、学生が中心となってスポーツ栄養の活動を行うという珍しい“部活”があります。
詳しくはこちら! ⇒飯田女子短期大学 スポーツ栄養研究会
試合当日の朝食例(エネルギー818kcal、炭水化物の割合70%)
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ごはん ブロッコリーのピリ辛納豆和え カボチャとささ身の和え物 漬け物 青菜と油揚げのみそ汁 オレンジ (こばたてるみ先生のレシピ集より(文献8)) |
文献など
(1)運動生理・栄養学(Nブックス).編集:高松 薫ら,Pp.15-89,建帛社.
(2)栄養フルコース食を教示の中心としたスポーツ栄養講座(講義+調理実習)が運動部に所属する男子高校生の食意識に及ぼす影響.日本スポーツ栄養研究誌,6(1) : 37-47,2013.
(3)栄養士養成過程の学生が栄養サポートを行う際の心理支援.運動とスポーツの科学,19(1) : 199-206,2013.
(4)競技会中の昼弁当プロデュースに関する研究報告.運動とスポーツの科学,18(1) : 111-116,2012.
(5)Chloride-dependent bicarbonate secretion in mouse large intestine.Biomedical Research,27(1) : 15-21,2006.
(6)ブログを用いた栄養サポートに関する研究.飯田女子短期大学紀要,28: 17-36,2011.
(7)日本人自転車ロード選手を対象に軽負担な炭水化物ローディングを実施した事例報告.飯田女子短期大学紀要,29: 103-113,2012.
(8)http://www.shoku-sports.jp/ こばたてるみのスポーツ栄養・食育:オフィスしょくスポーツ