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心臓とリハビリテーションについて

はじめに
 与えられたテーマはスポーツと健康なのですが,看護の分野から“心臓リハビリテーションについてお話したいと思います.
 心臓には冠動脈という心筋を栄養する大事な動脈がありますが,この動脈が何らかの原因で狭窄してしまったり閉塞してしまう病気を虚血性心疾患といいます.具体的には狭心症や心筋梗塞といった病気です.これらの病気は冠動脈の硬化に起因しており,動脈硬化の危険因子を複数あわせもった状態を『メタボリックシンドロームmetabolic syndrome』と呼んでいます.メタボリックシンドロームは最近よく話題になっており書籍も沢山でていますので,ここでは虚血性心疾患になってしまった患者さんのリハビリテーションについて看護学科の学生が学んでいることを中心にお話したいと思います.
 
○心臓リハビリテーションとは
 リハビリテーションという言葉はよく耳にすると思いますが,「心臓」と結びついた言葉はあまり聞くことがないように思います.1964年WHO(世界保健機構)は,“心臓リハビリテーション”の考え方を定義しました.その定義を紹介しますと,「患者が可能な限り良好な身体的・精神的・社会的状態を確保するのに必要な行動の総和であり,患者自身の努力により社会・地域社会において最大限の地位を確保すること」となっています.日本国民の疾患別死亡順位では,悪性新生物に1位の座を譲ったものの,心疾患はまだまだ多い疾患ですので社会復帰を目指したこのような考え方は大切でしょう.
 心臓リハビリテーションは,急性期から慢性期までの長期的で包括的なプログラムで,主に虚血性心疾患(心筋梗塞など)の患者さん,心臓手術後の患者さんなどを対象として実施されています.
 
 
○いつから行うか?
 
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 答えは,「できるだけ早く」です.心筋梗塞などを発症しCCUに入室してから始まります.そして,ず~っと行うことが望ましいです. 心臓の病気なのに・・・そんなに早くリハビリが必要なのかと思いますが,低下してしまった心機能を回復するためには早期から計画的段階的にすすめることが効果的であることが分かっています.
 疾患によって一旦は身体機能が低下しますが,急性期には心臓の仕事量をその人の心機能の程度に合わせ,さらに合併症に注意しながら段階的に進めて行きます.
 退院前には,4~5METs相当の活動が可能になることが目標です.維持期には患者さんの高いQOLを保ちながら再発予防のための運動療法や二次予防に焦点を当てて指導します.
 METsとは,安静座位の酸素摂取量<3.5(ml/kg/分)>を1METとし、これの2倍を2METs、3倍を3METsと表わしているのですが,例えば入浴は4~5MTEsに相当します.
 運動といった点からの4~5METsに相当するものとしては,<やや速めの歩行(5km/h)>や<自転車(13km/h)>に相当します.
日常生活では<重い荷物を抱えて歩く><軽い大工仕事><立て膝での床拭き><性生活><草むしり>などが相当します.
※患者さん個々の心機能に合わせた運動療法の処方がありますので,自分の判断で急にステップアップすることは危険です.
 
 
チーム医療のなかで看護師が果たす役割
 
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  患者さんを中心に,図に挙げたような職種がそれぞれ協力し合って進めて行きます.
 
 
その中でも看護師の役割としては以下のことが挙げられます.
 
 1.運動療法のサポート
  ・患者さんの状態およびその変化を観察
  ・上記をもとにアセスメント(判断)してステージアップにあたる
  ・急変時には医師とともに処置にあたる
 2.生活指導
  ・患者さんの生活を知り社会復帰への支援
  ・意欲の向上,維持のためのかかわり
  ・冠危険因子の振り返り,再発予防に向けた行動変容
  ・家族なども含めた指導
 
 
○本看護学科での学び
 心臓リハビリテーションは成人看護学分野で2年生が学んでいます.
 医療の場はどの分野もそうなのですが,心臓リハビリテーションもチーム医療が欠かせません.本学ではチーム医療における看護師の役割を学ぶとともに,事例(紙上事例)を基に効果的な心臓リハビリテーションについて考えています.また,3年生になれば臨地実習で実際に,虚血性心疾患の患者さんの心臓リハビリテーションに携わります.段階的なリハビリテーションの計画・実施やそれに付随するアセスメントを実施するのはもちろん,患者さんとともに日常生活を振り返り短期・中期的な日常生活指導についても行います.
 
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 その際には,学生手製の,とても分かりやすくカラフルな,しかも,患者さんが分かりやすい指導用パンフレットを個別に作成しています.お見せできないのが残念ですが,その出来映えにはいつも感心させられます.
 
 
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  (上図は心臓リハビリテーションの運動負荷試験に欠かせない12誘導心電図を学生同士で行なっているところです.)
 
 
参考サイト
心臓リハビリテーション学会
http://square.umin.ac.jp/jacr/
 
参考本
・村山正博(監修):日本心臓リハビリテーション学会編 心臓リハビリテーションチーム医療の実際,総合医学社,2000.
・系統看護学講座専門7循環器(成人看護学3)第12版,医学書院,2008
・病気がみえるvol.2 循環器疾患,第1版,メディックメディア,2003.